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冷たい、朝、6時42分。しがない新人サラリーマンのアキラは、不思議なくらい静まり返った地下鉄の
駅のホームの上で、今まで感じたことのない腹の痛みに、ただただ苦笑いするしかなかった。無数の
悪性のガラス片が自らの腹の中を縦横無尽に駆け回り、腹の中のありとあらゆる柔らかい部分を、ま
るで殺人鬼のように無差別に切り裂いていくような痛み。痛みに耐え切れず、少しでも体を揺り動かそ
うものなら、その数万倍の痛みが、腹の奥から外を貫いていく。
「ちくしょう。」
人一倍、強がりなアキラの精一杯の強がりの言葉すら、腹の内部に鋭く反響し、痛みに変わっていく。 一刻も早く、トイレを探さなければならない。
「ちくしょう。」
人一倍、強がりなアキラの精一杯の強がりの言葉すら、腹の内部に鋭く反響し、痛みに変わっていく。 一刻も早く、トイレを探さなければならない。
アキラは何かを思い立ったように、荒々しくホームの階段を駆け上がっていく。慟哭の、朝、6時44分。
このままだと、7時04分の列車に間に合わない。アキラは、がむしゃらにトイレの場所を探す。
今まで感じたことのない腹の痛みと、危機感を煽る脂汗で、目が霞んで何も見えない。アキラは、まる
で盲目の少年のように、ただ自らの感覚を信じて、前へ進むしかなかった。
ホームの階段を駆け上がり、地下独特の無機質な通路を50メートルほど進んだ先に、もうひとつ、同 じような階段があった。アキラは今にも使い果たしてしまいそうな力を振り絞って、その階段をよろよろ と駆け上がる。
「あった…」
すっかり重たくなってしまった腹を手で抱え込みながら、アキラは安心感に胸を撫で下ろす。アキラは 何かにとりつかれたように、薄汚いトイレの中へ吸い込まれていった。
ホームの階段を駆け上がり、地下独特の無機質な通路を50メートルほど進んだ先に、もうひとつ、同 じような階段があった。アキラは今にも使い果たしてしまいそうな力を振り絞って、その階段をよろよろ と駆け上がる。
「あった…」
すっかり重たくなってしまった腹を手で抱え込みながら、アキラは安心感に胸を撫で下ろす。アキラは 何かにとりつかれたように、薄汚いトイレの中へ吸い込まれていった。
トイレに入ると、中には個室のトイレが三つあって、その前に二人の中年の男性が並んでいる。おそ
らく個室のトイレに入りたくて、待っているのだろう。
そんな様を目の当たりにして、アキラは、この上ない衝撃を受ける。アキラの前に中年の男性が二人 並んでいるということは、アキラがトイレの個室に入り、用を足すためには、前に並んでいる中年男性 が用を足し終わるのを待たねばならないということを意味する。
「なんて、こった…」
これからアキラに待っている、あまりに壮絶すぎる戦いのことを思うと、アキラは、ただただ、そうぶっきら ぼうに呟くしかなかった。
―あまりに壮絶すぎる戦い―
そう、戦いはまだ始まったばかりなのだ。アキラは、すっかり重たくなってしまった腹を手で抱え込みな がら、自らの「便意」に宣戦布告した。それは、絶対に負けるわけにはいかない戦いだった。
壮絶な、朝、6時51分。タイムリミットまで、あと13分。
そんな様を目の当たりにして、アキラは、この上ない衝撃を受ける。アキラの前に中年の男性が二人 並んでいるということは、アキラがトイレの個室に入り、用を足すためには、前に並んでいる中年男性 が用を足し終わるのを待たねばならないということを意味する。
「なんて、こった…」
これからアキラに待っている、あまりに壮絶すぎる戦いのことを思うと、アキラは、ただただ、そうぶっきら ぼうに呟くしかなかった。
―あまりに壮絶すぎる戦い―
そう、戦いはまだ始まったばかりなのだ。アキラは、すっかり重たくなってしまった腹を手で抱え込みな がら、自らの「便意」に宣戦布告した。それは、絶対に負けるわけにはいかない戦いだった。
壮絶な、朝、6時51分。タイムリミットまで、あと13分。
ドクッ、ドクッ、ドク。心臓の重苦しい重低音が、まるで時限爆弾のようにアキラの心を圧迫する。
「うんこなんて、普通5分くらいで終わるだろ…」
自分はこんなにもうんこがしたいのに、なかなか自分の番が回ってこない。そんな行き場のない怒りを どう処理していいか迷う。アキラは、何度も、何度も、便意を抑える呪文を唱えた。
前に並んでいる中年の男性二人は、なぜか平然とした表情をしている。そんな「オッサン」二人のあま り場違いな表情が、さらにアキラの怒りを大きくさせた。
「うんこなんて、普通5分くらいで終わるだろ…」
自分はこんなにもうんこがしたいのに、なかなか自分の番が回ってこない。そんな行き場のない怒りを どう処理していいか迷う。アキラは、何度も、何度も、便意を抑える呪文を唱えた。
前に並んでいる中年の男性二人は、なぜか平然とした表情をしている。そんな「オッサン」二人のあま り場違いな表情が、さらにアキラの怒りを大きくさせた。
三つある個室トイレの一番右端のドアから、トイレを流す音が聞こえてくる。
「よし!きた!これで次の次だな。」
しかし、流す音が聞こえてきたというのに、なかなか中から人が出てこない。
「よし!きた!これで次の次だな。」
しかし、流す音が聞こえてきたというのに、なかなか中から人が出てこない。
イライラする。
いい加減にしろ!
いや、だめだ。
怒った分だけ体力を消耗してしまう…
しばしの葛藤の後、一番右端の個室トイレから人が出てくる。いや、だめだ。
怒った分だけ体力を消耗してしまう…
軽くガッツポーズ。よし、次の次だ…
そのときだった…
そのときだった…
アキラは恥ずかしさと自分のあまりのふがいなさに、目にいっぱいの涙を溜めるしかなかった。一番
右端の個室トイレから人が出てきた嬉しさで、軽くガッツポーズしてしまったことが、すべての運の尽き
だった。ガッツポーズした際の体の揺れで、今までギリギリで耐えていた緊張の糸がプッツリ切れてし
まったのだ。
「…やべぇ・・・ちょっと出ちゃった・・・」
完全に緊張の糸が切れてしまったアキラは、もはや自らをもう一度修復させることはできなかった。 アキラのスラックスのお尻の部分がうんこで大きく盛り上がり、はちきれんばかりだった。さらに、うん こはアキラのスラックスの中を伝い、ついには、スラックスの裾から外に押し出てきた。
「…やべぇ・・・ちょっと出ちゃった・・・」
完全に緊張の糸が切れてしまったアキラは、もはや自らをもう一度修復させることはできなかった。 アキラのスラックスのお尻の部分がうんこで大きく盛り上がり、はちきれんばかりだった。さらに、うん こはアキラのスラックスの中を伝い、ついには、スラックスの裾から外に押し出てきた。
それは、アキラが想像していた以上だった。
アキラ、23歳。それは、悲しみの、7時05分。もう、間に合わない。













